2月の晴れた土曜日に
暑いのと寒いのとどっちが苦手?と聞かれたら、迷わず「暑いの!」と答える冬生まれの私ですが、その割にはこの冬はあまり出歩いていないことに気づきました。先だっての椎名さんのステージでも、今年はもう少し散策(徘徊)に磨きをかけたいですなどと、何とはなしの今年の目標のようなものを口走ってしまった手前、ご近所ウロウロもいいけれどまたちょっと足をのばして足長おじさんになってみようかなあと思いたち、そういえば三浦の桜もボチボチだってウワサだしここらでいっちょ出向いて行ってまた誰かとバッタリ出会い、花と足長おじさんの写真なんか撮られてみるか、なんてことを思っていた矢先、知人である音楽家の光田健一さんからバースデーライブをやるのでよかったら遊びに来てねとお誘いいただきました。昨年は僕も参加させてもらいましたがあれからもう1年ですか。早いもんですなあ。今回は弾き語りで会場は調布だとか。
(!…おお!?調布かあ…!)
調布といえば数年前に駅が地下化された頃に行ったきり。行ったきりならシアワセになればいい(by ジュリー)のですが、その後とんと出向く機会がなくそれっきりそれっきり〜もうそれっきりですよ〜(by モモエちゃん)状態だった私。ゆるやかな鉄道好きには完成された駅やその周辺がどうなっているのかかねがね気になっていましたから、今回のお誘いはまさに渡りに哲也、じゃなかった渡りに舟です。これはもう行くしかないでしょうってことで、ありがたい外木場(by カープ広島)にあまえてライブにうかがうことにしたのです。光田さんのライブも調布の街もどちらもお久しブリーフ(by ゲッツ)な私は、そんなわけでウキウキと出かけたのでした。
よく晴れた17日の土曜日。調布駅に降り立った私はあまりの変貌ぶりに驚かされました。もう改札を出たところから全然知らない街状態。キレイに整備された通路にはこれまた小ギレイなお店が並んでいます。案内図を頼りに地上に上がってまたビックリ。以前のホームや線路だったところには大きな商業ビルが立ち並びすっかり様変わりしているではありませんか。
(イヤハヤ、こりゃまたどうも…)
と、すっかりオノボリさん状態の私。ここに電車が行き交っていた風景を思い出すのも難しいくらいの変わりっぷりにため息が出ましたが、これはもうとにかくギンズに行こう、行くしかない!行けばわかるさ、元気があれば何でもできる!元気ですか!バカヤロー!!(by A.I.←注:人工知能ではない)と気合を入れ直し、かつての線路跡に沿って歩き出すとたちまちお店に到着。まだ線路が地上にあった頃はアンダーパスで、その後、地下化の工事が始まってからは仮設の陸橋で線路をまたいでいた目の前の通りは、歩道も広く自転車レーンも整備されて見違えるようでしたが、ギンズは以前と変わらない姿でそこにあったので、なんだかほっとしました。入り口でスタッフのナオキさんとギンズの歌姫ノリコさんとご挨拶。中に入るとキザミさんが調律の真最中でしたが私の姿を見るや、
「あれぇ〜!?チコちゃん!お久しぶり〜!」
「おはようございま〜す!ごぶさたしてます〜!」
「どうしたの〜?今日はバイオリン弾くの〜?」
「?……えーっと…」
ジョークなんだか天然なんだかよくわからないキザミさんの言葉をひとまず笑顔で受け流し、うわあ懐かしいな〜と店内を見回す私。光田さんが到着するまでにはまだ少しかかりそうだったのですかさずここでもご近所を散策(徘徊)してみると、劇的変貌を遂げた駅周辺とはうらはらに、このあたりはまだ以前と同じように静かに家々が並んでいるのでした。その合間の狭い路地をいくつかたどっていくと、こないだの大雪の名残がまだ道の端に残っていました。そこだけ日陰の時間が多いからでしょうか。そういえば都内でも一歩裏手に入ると除雪されてところどころ黒くなった雪がしばらく残っていたし、このへんもけっこう積もったんだろうなあ。と通り過ぎようとした瞬間、その雪がフッと動いたのです!
(えっ!?なに!?…オワワッ!!…)
超ビビる私。なんと私が雪のひとかたまりだと思ったものは、毛足の長い犬だったのです。マジすか。なんていう名前かわかりませんが、ホラいるでしょう?白い毛に黒というかグレーの色が混じった長い毛のワンちゃんが。きっと調布のマダムが用事でちょっとそこにつないでいたんでしょう。で私が近づいてったもんだから気配を察知したんでしょうね。あービックリした。脅かさないでよ〜!ってコッチが勝手に驚いただけだけど。とそんな小さなサプライズもあった散策(徘徊)を終えてギンズに戻るとちょうどご本人も到着したところでした。
「おっはよ〜!今日はよろしくね〜」
と光田さん。やがて本日のゲスト、チェロのシンコちゃんやマスターのギンさんがやってきてお久しぶりのご挨拶。あわただしくサウンドチェックを終えて気がつけばもう会場の時間です。今日もたくさんのお客さまがいらっしゃいました。小さめの会場で、特にここはステージが低い位置にあり、そこにもいわゆる「アリーナ席」がもうけられ、全体的にご本人との距離が近いのですが、終始笑顔で話し弾き語る光田さんとその姿を熱心にあたたかく見守るお客さまの間には、とてもゆったりとリラックスした空気が漂っていました。それから音もとてもスッキリとクリアに聴こえたのですが、PAシステムが変わったことが関係してるんでしょうか。それともギンさんの腕前でしょうか。イエイ。そしてそんなクリアなサウンドを聴いていて、あ、今日は光田さん調子良さそうだなあ、声がよく出てるなあと感じました。ウフフ(←なぜ笑う)。いや別にご本人に確認したわけじゃないですからあくまで私の主観ですけど。でもこの日はいつにも増して声がキレイに抜けてるなあと感じたんです。終演後、そういえば今日水飲まなかったんだよねー、とご本人も言ってましたし、きっと調子良かったんじゃないかなあ。調布も良かったけど。だからでしょうか、岩崎宏美さんの『プロポーズのとき』を歌った時もしっかり高音が出ていましたし、さらに渡辺真知子さんの『ブルー』を弾き始めた時には、
(エッ!?…マジ!?これいくの!?ホントに歌っちゃうの!!?…)
と、ワタクシちょっと大げさに言えば腰が抜けそうなほど驚いたんです。だってサビがめっちゃ高いんですよこの歌。真知子さんご本人にとってもかなり高い音だと思うんですが、それそのまんまいっちゃう!?と、かなり衝撃を受けるとともにサビが近づくにつれ手に汗握りましたよ。♪とりとめのない心…、ここでもう十分に高い!けどしっかりクリア。で、♪あなたと私いつも…、と同じフレーズがきて、最後、♪背中合せの…、ここが、高い!超お高い!たっかーーい!!ええ、あっまーーい!(by SPW)じゃなくてたっかーーい!んですけど、なんと!歌いきったッス!光田さんすごい!!ごいす!!ゴイーーッス!(by 長介)と思わず心の中で叫んでしまいましたよ。すげえなあ、やっぱ今日は調子いいんだなあ、とトリハダがたった私です。そしたら終わった後に告白されてましたね。ついオリジナルのキーで始めちゃったって。アッハッハッハ!なんてことですか。光田さんは真知子さんとももう長いお付き合いですからやっぱり曲がカラダに染み込んでるんですね。同じく染み込みオヤジの私としてはそれこそ身に染みてよくわかる話しでした。間奏で自然にさりげな〜く1音下げたってのもさすが。いろんな意味で大拍手の1曲でした。
そしてゲストのシンコちゃんもこの日は大活躍でしたねえ。昨年はブリトリプラスで一緒に50曲を戦い抜いたので多少は気が楽なんじゃないかなあと勝手に思っていたのですが、さにあらず。チラッと小耳にはさんだのは、なんかね、普段のチェロパートだけじゃなくて、曲によってはバイオリンのパートを弾いたりしてるんだって。ひええ。出ましたよ、最高のステージのためならば一切の妥協なし手抜きなしタヌキソバ一丁ミニ天丼もセットでね!のヒト光田さんのアレンジ。クルシタノシイ現場の片鱗を見た思いがしましたよ。でもシンコちゃんはいつもニコニコしてるから全然クルシソウには見えなくてそこがまたカッコイイんだけどね。この日演奏した『みち草』という曲では、収録されたアルバムと同じくシンコちゃんの口笛からスタートしたんですが、光田さんによれば、当時何人かで試した結果シンコちゃんが口笛を担当することになり、何度か録った中から、なんとも素朴でほのぼのした味わいがあるってことで、あえてちょっと調子っぱずれなところがあるテイクを採用したんだとか。いやああらためてこの日もいい味出してましたね。ちなみにその口笛オーディションに落選したのは私です。はっはっは。あー、でも当時もし口笛の達人、ギターの吉澤さんがいたらどうなってたかなあ。逆にうますぎてやっぱり落ちてたかもしれないかな。ホホホ。
さてワタクシはというと、包丁一本サラシに巻いて、じゃなかったカホン一個をサラシには巻けないのでキャリーカートで転がしていきました。2部の途中で、今日は友達が来てくれていまーすと紹介されて2曲ほど参加。まずはお客さまと一緒に『南風』で新しいコーラスパートを歌いました。すると、今日はもうひとりお友達が来てくれました。加藤くんです!と光田さん。エッ!ホント!?と思っていたら、光田さんが手元の何やらリズムボックス的マシンのボタンをピッ!すかさず「カトーでーす!」と加藤さんの声が。おお〜!?これはまさしくカトちゃんじゃないですか!マジすか!いったいいつの間にこんな小箱の中に!?(←馬鹿)そして曲は『世間She Loves You』へ。本来ならそれこそ打ち込みのリズムを流すところを、この日は私が生のカホンで担当(てか生のカホンって言い方でいいのだろうか?柔らかそうだけど)し、コーラスの部分は光田さんがカトちゃんボタンをピッ!カトちゃんピッ!でコーラスパートが流れるというなんというか半アナログ仕様。同期演奏ではないのでフツーに打ち込みでクリックに合わせて演奏する(それはそれで大変ですが)のと違い、必要な部分にジャストのタイミングでボタンを押さなきゃならないんですよ。しかも押してからコーラスが出るまで多少タイムラグがあるのでそれも計算しなきゃいけない。しかもピアノを弾きながら歌いながらですからね。でも本番では次々クリアしていくもんだから私そのたびに光田さんの方を見て笑ってしまいました。いやあ楽しかったです。それと、個人的にはアンコールで歌われた『ありがとね』がよかったなあ。光田さんが尊敬する小田和正さんの『老人のつぶやき』という曲に影響されて、なんて話しをされてましたけど、この曲は昨年もそれ以外でも何度も演奏してるんですけど、なんでしょう、新たな感覚というか新鮮といったらいいのかうまく言葉にできないんですけどすごく共鳴するところがあったんです。今回は♪調布の街は久しぶりでしょ…、と歌っていたこの部分はいつもライブをする街の名前が入るのですが、ふと、そういえば一番最初の、つまりオリジナルはどこの街だったっけ?という疑問が湧き上がり、しかしこれがなかなか思い出せないというのは加齢によるものでしょうか(知りませんがな)。それでも必死に記憶の糸(すでにブツぎれ)を手繰ったり過去の資料をほじくり返したりしてどうにかこうにか「渋谷」にたどりついたのですが、ということはこの曲が作られたのはもうかれこれ20年も前ということになります。おお〜……。♪君も僕ももういい歳なのに…、いくら小田さんの影響を受けたと言ってもよくこういう歌詞を書いたもんだなあとしみじみ思いました。もっとも当時の光田さんが思い描く「いい歳」がいくつぐらいの設定だったかはわかりませんけど。まあ今はもうワタクシ、ホントにいいトシだからとうに設定を超えてるとは思いますけども、でも自分が今のこの歳になったことで、当時とはまた違う受け止め方ができるようになったってことだと勝手に解釈しております。とても素直に心に響いた『ありがとね』でした。
ということで光田さんの、デビューしてから今日までの音楽的歴史を時系列に沿ってお届けというテーマだったバースデーライブを、テーマとは関係なく思いつくままに書き連ねてまいりましたが、久しぶりに大好きな音楽、大好きな歌をたっぷり(いろんな意味で。ウフ)と堪能させていただきました。終演後、表に出たら昼のあたたかさはどこへやら。風がピューピューさみーのなんの。でしたが、散策と音楽で充実した1日を振り返りながら後ろは振り返らずにカホンコロコロ転がして、足早に駅へと向かったのでありました。
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by cicocico
| 2018-02-27 00:56
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