福田さんとその周辺(8)
コージローくんが縁で数年ぶりにお会いすることができ、いろいろ話しをすることができたおかげで、実は恩田さんも江戸っ子だということを知ったのですが、なるほど言われてみれば時おり出るべらんめえ口調といい、思ったことはキチンと正直に言うところといい、体制にながされること無く自分の正義というか信念を貫く姿勢は、まさしく江戸っ子のそれだと理解できました。人はついその場の雰囲気などにながされがちですが、こと音楽に関しては恩田さんは自分の意見、善し悪しを含めハッキリ主張できる人なのです。もちろん単に頑固というのではなく、より良い音楽をつくっていくための意見や思うところを正直に言葉にできるというのがすごいところです。これは当たり前っちゃ当たり前で大事なことですが、簡単そうで同時になかなか難しいことでもあります。場合によっては(本来そういうことでは変なのですが)干されるってことにもなりますもの。恩田さんはしかし、おかしいところはおかしいとキチンと言えるし、また人の意見でもいいと思うものはちゃんと聞き入れてくれる、まさに職人の矜持を持った人でした。あの頃は勝手に警戒してスイマセン。
そして一方では、携帯電話を何度も落としてしまうというような、お茶目な一面もお持ちです。酔って帰る途中にどこかで落としてしまい警察から連絡があり受け取りにいったところ、届け出た人が携帯を拾った場所は自分ちの前だったとか、信号が変わりそうな横断歩道をダッシュで渡る途中で落としてしまい、必死の祈りもむなしく目の前で大型ダンプにひかれて厚さ1ミリの超薄型携帯にしてしまったとか、それでも一応ショップに持っていったけれど「これは無理ですね」と一蹴されてしまったとか、いろいろな心あたたまるエピソードも正直にたくさん教えてくれました。ホント、知るほどにいいお方です。
コージローくんのライブにもちょくちょく足を運んでくれる恩田さんは、いつも正直に感想などを聞かせてくれます。時には耳が痛いこともありますが、いいところもそうでない点も隠さずハッキリ言ってくれるというのは、興味を持ってもらえているということでもあるわけで本当にありがたいことです。ある日のライブの後のこと、恩田さんが例の口調で、
「…ホラ、いつもヨ、コージローが変なMCして空気を怪しくすっからヨ、それをウッディとかが頑張って何とかしようとするだろ?そんで空回りしちゃうってパターンだけどよ、イヤ、今日はよかったヨ、おぅ、マジでよ…」
と言いました。続けて、
「…ちこちゃんもヨ、今日はおもしろかったよォ、アレなァ…」
とも。実はこの日、僕は1本スマッシュヒットを放っていたのです。ある曲の出だしでコージローくんがミスを犯したため、演奏をやり直すはめになったのですが、彼があたふたして妙な間があいて妙な空気になってしまった時に、反射的にポロッと出た一言が意外にウケて会場が一気になごんだのです。恩田さんはそのことをほめてくれたのでした。
「…だけどよォ、アイツのフォローも大変だヨな?」
「えぇ、まぁ…」
「…見てると毎回、ちこちゃんも頑張ってけっこうしゃべってるよナ?」
「まぁ、そうっスねえ…」
「…ケド、基本、つまんねェよナ?」
「★☆★!?ゥわアァ〜〜オッッ!!!☆★☆★☆…」
〝…アンタァ…ガンバッてんのはわかるけど、ダメなものはダメですからァッ……!残念っっ!!…他意はないけど愛はある、恩田流、チャキチャキべらんめえ切りィィッ!!…〟
てなとこですか。
ハイ、切られましたよお。真っ正面から切られました。一刀両断。気持ちいいくらいに真っ二つです。どうですかこの切れ味。僕もね、そこそこ長いこと生きてきましたけど、ここまで堂々と面と向かって『つまんねえ』と言われたのは初めてですよ。いやあ気持ち良かったねえ、イヤ、ホントですよ。思わず笑っちゃっいましたよ。ビックリしたけどね。こりゃあ知らない人から見たらコワい人だと思われても仕方ないっス恩田さん…オホホ。いや、でも僕もそもそも自分はさほどおもしろくない奴だとわかってましたし、しゃべりも上手いわけではなく気のきいたツッコミなどできる力がない事も気づいていました。しかし現場によっては、つまりコージローくんが醸し出す不穏なフレーバーに会場が包まれた時には、やはり個人的な損得などよりもまずは救難活動を優先するのは人道的見地からも当然のことでしょう。ただ、それはそれでいいのですが周囲の優しさやあたたかさの中で背伸びをし続ける状態に慣れてしまうと、知らぬ間に自分の力を過信してしまう危険性も確かにあります。
(もしかしてオレって、そこそこイケてるんじゃね?)
そんな慢心の先に待っているのは寒く厳しい冬の時代。そうならぬよう気をつけていたつもりですが、どこかに隙が生まれていたのかもしれません。スマッシュヒットを放った時だからこそ基本に立ち返り、決して己を見失ってはならない。達人の言葉には、そんな思いが込められていたに違いありません。多分違うでしょう。でもここまで核心を突いてズバッと言ってもらえたおかげで、僕もあらためて自分はおもしろくないことに自信が持てました。恩田さん、あざッス。
…長いスね今日は。笑わせ力の話もしたかったけどやめときます。明日本番だし。かわりに恩田さんからコージローくんへの愛情に溢れた切れ味鋭い名言の中からいくつか。
イ)「アイツはよォ、メンバーがヨシ行くぞって時に行かねえよな?」
ロ)「フレーズ変えて弾くのはいいけどヨ、オマエの場合リズムも変わっちゃうからなァ…」
ハ)「バカヤロゥ、そんな合図じゃ入れねえよ」
ニ)「オマエ、わかってないのにハイって言ってんだろ?」
ホ)「いいからとっとと弾けって!」
⦅ちなみに、イ)はライブを見た後に僕に語ったもの。それ以外はリハーサル中でのものです⦆
【解説】
イ):トークが終わり準備も整い、さあ次の曲へ!と見せかけてまたしゃべるということを繰り返し、メンバーもお客さんも心の中でズッコケさせる見事な間合いについての一言。
ロ):ギターを違うフレーズでやりたいと言う彼が試しに弾いたのを聴き、少し間をおいての返事。
ハ):2人で同時に入る曲なのにコージローくんのカウントが中途半端でわかりづらく、しかも彼はそのまま平気で弾き進んでいるのを見て。
ニ):恩田さんからのアドバイスを熱心に聞き、返事は威勢よくしたコージローくんだったが、不穏な挙動をたちまち見抜かれてしまった。
ホ):じゃ、いきます!ワン・ツー・ス…あ、ちょっといいスか?と、今まさに演奏するってタイミングで素晴らしく腰を折るコージローくんを一喝。イ)の上級編。
こうして並べてみるとメッタ切りです。が、どれもこれも見事に物事の本質、核心を突いた言葉ばかりでもあります。名刀一閃、急所を一撃。これでは相手は切られたことすら気づかぬうちに永い眠りについていることでしょう。てか、わりといつも、切られてるのに気づいてません。で、キョトンと起きてます。で、たまに、あ゛ぁ゛〜〜っ…って言ってます。
さて、そんなこんなで明日のライブですが、3対バンで、しかもめずらしくトップのため、僕らはおそらく入れ替えやら何やらでバタバタ撤収する可能性がありますこと、どうかご了承くださいまし。でもコージローくんがステージ上でバタバタすることはないので安心してお楽しみください。と一度言ってみたいものです。ともかく、前回以上にいいライブを目指して、明日はよろしこ〜!
…おっと、本日これまで。
そして一方では、携帯電話を何度も落としてしまうというような、お茶目な一面もお持ちです。酔って帰る途中にどこかで落としてしまい警察から連絡があり受け取りにいったところ、届け出た人が携帯を拾った場所は自分ちの前だったとか、信号が変わりそうな横断歩道をダッシュで渡る途中で落としてしまい、必死の祈りもむなしく目の前で大型ダンプにひかれて厚さ1ミリの超薄型携帯にしてしまったとか、それでも一応ショップに持っていったけれど「これは無理ですね」と一蹴されてしまったとか、いろいろな心あたたまるエピソードも正直にたくさん教えてくれました。ホント、知るほどにいいお方です。
コージローくんのライブにもちょくちょく足を運んでくれる恩田さんは、いつも正直に感想などを聞かせてくれます。時には耳が痛いこともありますが、いいところもそうでない点も隠さずハッキリ言ってくれるというのは、興味を持ってもらえているということでもあるわけで本当にありがたいことです。ある日のライブの後のこと、恩田さんが例の口調で、
「…ホラ、いつもヨ、コージローが変なMCして空気を怪しくすっからヨ、それをウッディとかが頑張って何とかしようとするだろ?そんで空回りしちゃうってパターンだけどよ、イヤ、今日はよかったヨ、おぅ、マジでよ…」
と言いました。続けて、
「…ちこちゃんもヨ、今日はおもしろかったよォ、アレなァ…」
とも。実はこの日、僕は1本スマッシュヒットを放っていたのです。ある曲の出だしでコージローくんがミスを犯したため、演奏をやり直すはめになったのですが、彼があたふたして妙な間があいて妙な空気になってしまった時に、反射的にポロッと出た一言が意外にウケて会場が一気になごんだのです。恩田さんはそのことをほめてくれたのでした。
「…だけどよォ、アイツのフォローも大変だヨな?」
「えぇ、まぁ…」
「…見てると毎回、ちこちゃんも頑張ってけっこうしゃべってるよナ?」
「まぁ、そうっスねえ…」
「…ケド、基本、つまんねェよナ?」
「★☆★!?ゥわアァ〜〜オッッ!!!☆★☆★☆…」
〝…アンタァ…ガンバッてんのはわかるけど、ダメなものはダメですからァッ……!残念っっ!!…他意はないけど愛はある、恩田流、チャキチャキべらんめえ切りィィッ!!…〟
てなとこですか。
ハイ、切られましたよお。真っ正面から切られました。一刀両断。気持ちいいくらいに真っ二つです。どうですかこの切れ味。僕もね、そこそこ長いこと生きてきましたけど、ここまで堂々と面と向かって『つまんねえ』と言われたのは初めてですよ。いやあ気持ち良かったねえ、イヤ、ホントですよ。思わず笑っちゃっいましたよ。ビックリしたけどね。こりゃあ知らない人から見たらコワい人だと思われても仕方ないっス恩田さん…オホホ。いや、でも僕もそもそも自分はさほどおもしろくない奴だとわかってましたし、しゃべりも上手いわけではなく気のきいたツッコミなどできる力がない事も気づいていました。しかし現場によっては、つまりコージローくんが醸し出す不穏なフレーバーに会場が包まれた時には、やはり個人的な損得などよりもまずは救難活動を優先するのは人道的見地からも当然のことでしょう。ただ、それはそれでいいのですが周囲の優しさやあたたかさの中で背伸びをし続ける状態に慣れてしまうと、知らぬ間に自分の力を過信してしまう危険性も確かにあります。
(もしかしてオレって、そこそこイケてるんじゃね?)
そんな慢心の先に待っているのは寒く厳しい冬の時代。そうならぬよう気をつけていたつもりですが、どこかに隙が生まれていたのかもしれません。スマッシュヒットを放った時だからこそ基本に立ち返り、決して己を見失ってはならない。達人の言葉には、そんな思いが込められていたに違いありません。多分違うでしょう。でもここまで核心を突いてズバッと言ってもらえたおかげで、僕もあらためて自分はおもしろくないことに自信が持てました。恩田さん、あざッス。
…長いスね今日は。笑わせ力の話もしたかったけどやめときます。明日本番だし。かわりに恩田さんからコージローくんへの愛情に溢れた切れ味鋭い名言の中からいくつか。
イ)「アイツはよォ、メンバーがヨシ行くぞって時に行かねえよな?」
ロ)「フレーズ変えて弾くのはいいけどヨ、オマエの場合リズムも変わっちゃうからなァ…」
ハ)「バカヤロゥ、そんな合図じゃ入れねえよ」
ニ)「オマエ、わかってないのにハイって言ってんだろ?」
ホ)「いいからとっとと弾けって!」
⦅ちなみに、イ)はライブを見た後に僕に語ったもの。それ以外はリハーサル中でのものです⦆
【解説】
イ):トークが終わり準備も整い、さあ次の曲へ!と見せかけてまたしゃべるということを繰り返し、メンバーもお客さんも心の中でズッコケさせる見事な間合いについての一言。
ロ):ギターを違うフレーズでやりたいと言う彼が試しに弾いたのを聴き、少し間をおいての返事。
ハ):2人で同時に入る曲なのにコージローくんのカウントが中途半端でわかりづらく、しかも彼はそのまま平気で弾き進んでいるのを見て。
ニ):恩田さんからのアドバイスを熱心に聞き、返事は威勢よくしたコージローくんだったが、不穏な挙動をたちまち見抜かれてしまった。
ホ):じゃ、いきます!ワン・ツー・ス…あ、ちょっといいスか?と、今まさに演奏するってタイミングで素晴らしく腰を折るコージローくんを一喝。イ)の上級編。
こうして並べてみるとメッタ切りです。が、どれもこれも見事に物事の本質、核心を突いた言葉ばかりでもあります。名刀一閃、急所を一撃。これでは相手は切られたことすら気づかぬうちに永い眠りについていることでしょう。てか、わりといつも、切られてるのに気づいてません。で、キョトンと起きてます。で、たまに、あ゛ぁ゛〜〜っ…って言ってます。
さて、そんなこんなで明日のライブですが、3対バンで、しかもめずらしくトップのため、僕らはおそらく入れ替えやら何やらでバタバタ撤収する可能性がありますこと、どうかご了承くださいまし。でもコージローくんがステージ上でバタバタすることはないので安心してお楽しみください。と一度言ってみたいものです。ともかく、前回以上にいいライブを目指して、明日はよろしこ〜!
…おっと、本日これまで。
by cicocico
| 2011-03-07 20:12
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